子どもの作品どうしてる? 作って飾って心を育てよう

2025年09月04日(木曜日)

子どもの作品どうしてる? 作って飾って心を育てよう

子どもの作品が次々と増え、気付けば山積みに……。そんな経験はありませんか。「捨てないで」と子どもからお願いされると、いつどう処分すべきか悩む保護者も多いでしょう。

しかし、視点を変えると作品の一つひとつが成長の証しです。子どもの心理について詳しい子どもの発達科学研究所 主任研究員の大須賀優子氏は「親がコメントを添えておうちに飾ってあげましょう」と助言します。飾ることで子どもの心にもたらす良い影響について、大須賀氏に聞きました。

(取材・文:コハツWEB取材班)

空想世界が投影された子どもの作品 「捨てちゃダメ」の心理とは

段ボールのロボットやストローのネックレス、クレヨンで描いた家族――。 子どもの作品がなかなか捨てられず、捨てるタイミングや収納に悩む家庭も多いのではないでしょうか。

大人には落書きやがらくたに見える作品も、子どもの視点からすると、想像力や遊びの時間が詰まった大切な存在。「捨てちゃダメ」と主張するのは当然です。

子どもの発達科学研究所 主任研究員の大須賀優子氏は、「作品には子どもの遊びそのものが投影されている」と話します。

「『カキーンカキーン』と声を出しながら、自分で作ったロボットを動かして遊ぶ子がいますよね。その子の世界では空想のロボットと現実の作品が一体化しているわけです。こうした空想世界や、色や線や形そのものの心地よさを子どもが楽しんだ結果が『作品』となります」

作品をおうちに飾ると子どもの心に良い影響が

どんな作品も子どもたちの成長を物語る大切な足あと。そう知ってしまうとますます捨てられなくなりそうです。そんな親の悩みに対し、大須賀氏は「ぜひおうちに飾ってあげましょう」とアドバイスします。

「たとえ『これを飾るの?』と思ってしまうような作品でも、まず飾ってみてください。家族が作品を丸ごと受け止めてあげる姿勢を示すことが大切です」

では、飾ることは子どもにどんな影響を与えるのでしょうか。

「どれか一つでもおうちに作品を飾ってもらうことで、子どもは『自分の存在を丸ごと受け入れてもらえている』と感じます。それが『家族は自分のことを大事に思ってくれている』という実感につながり、心の安心感が生まれます」

子どもの作品を飾ることは、「あなたの存在が大切」というメッセージを届ける行為だといいます。

「『わたしたちはあなたが生きていることそのものが大事だし、素敵だと思っているの。だからあなたの作った作品は、どんなものでも素敵だと思ってるの』という気持ちを伝える手段が『飾る』なのです」(大須賀氏)

作品にコメントを添えて親の気持ちを伝える工夫も

さらにポジティブなコメントを添えると、よりよい効果が期待できるといいます。

「声だけの褒め言葉はすぐに消えてしまいますが、ポジティブな褒め言葉をコメントとして文字に残しておくと、繰り返し見ることができ、子どもは見るたびにうれしさが続きます。

コメントには日付や子どもの年齢、エピソードも添えておくと、親にとっても子育てのよい思い出になります。仰々しく飾る必要はありません。作品は画びょうやテープで壁に貼る程度でいいですし、コメントは付箋にちょこっと書いて貼るだけでも十分です」と大須賀氏。

「たいへんよくできました」など評価コメントは避けた方が◎

コメントを書く際、気を付けたいのが作品の良し悪しを評価する表現をしないこと。作品は上手下手で考えるものではなく、一緒に楽しむものという大人の姿勢が大切です。

「『ここはこうした方がよかったんじゃない?』など、つい大人目線で技術的なアドバイスをしたくなることもあると思いますが、評価は控えた方がよいでしょう。じつは『たいへんよくできました』も評価する言葉です。今の子どもたちは日頃から習い事や園・学校で、たくさん評価されてきているので、せめて遊びで取り組んだ作品は評価しないで丸ごと肯定してあげたいですね」(大須賀氏)

大須賀氏が勧めるポジティブなコメントは次の通りです。

例1: 大人が感じた「素敵な点」について書く
「ぐにゅっとまがったところがすてきだね」
「ここの青い色がパパママは大好きだよ」

例2: 子どもが制作中に話していた言葉を書く
「まっすぐかっこよく作りたいって言ってたけど、本当にそうなったね」
「海でイルカさんがあそんでいるんだよね」

例3: 子どもが制作していた過程に目を向ける
「接着剤がなかなかくっつかなくて、何回もやり直したけど、うまくいったね」
「あきらめずにがんばったから、かっこいい作品ができたね」

飾る場所や処分のタイミングはどうする?

統一感のあるインテリアを好む家庭では、飾る場所に困ってしまう場合もあるかもしれません。そういった場合は、部屋の一角に作品コーナーを作ることを大須賀氏はすすめます。

「隙のないインテリアの中でも、部屋の一部をアートギャラリーのように使えば、作品も、作品の写真も飾れます。大きさや素材の関係で飾るのが難しいものについては、写真を撮って飾るのも1つのアイデアです。

もし『全部飾って』と言われたら、『全部は無理だから写真にして◯◯くんのロボットギャラリーを作ろう』などと提案するとよいでしょう。

十分飾った後、作品とコメントも一緒に写真に残しておくと、子どもも気持ちの区切りをつけやすくなります」

処分のタイミングについては、どのように考えればよいのでしょうか。

「予め処分のルールを決めておくとよいです。たとえば『あなたの作品を置くこのエリアがいっぱいになったら、大切なものだけ残してあとはさよならしようね』と親子で納得できるルールを決めておきます。

子どもはだんだん成長するにつれて、判断力もついてきます。何でもかんでも捨てちゃダメと言っていた子が、取捨選択できるようになる。そうした成長を感じる意味でも、子どもが忘れた頃にそっと捨てるより、話し合って決める方がよいと思います」(大須賀氏)

捨てられずにため息をついていた作品の山も、子どもの心理を知ることで、成長を楽しむきっかけに変えられそうです。

監修:大須賀 優子(おおすか ゆうこ)

大須賀 優子
  • 公益社団法人 子どもの発達科学研究所 副所長・主任研究員
  • 小児発達学博士
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