2025年10月11〜13日、「日本教育心理学会第67回総会」がアクトシティ浜松 コングレスセンター(浜松市)で開催されました。
コハツWEBを運営する公益社団法人 子どもの発達科学研究所(以下、研究所)は、企画シンポジウム「COCOLOプランの科学的検討|不登校支援の新たなデザインと実践におけるエビデンスとは」を担当。
過去最多を更新し続ける不登校児童生徒数という喫緊の課題に対し、国が示した不登校対策「COCOLOプラン」を科学的な視点から多角的に検討しました。
企画・司会・話題提供を務めたのは、同研究所所長の和久田学。コハツWEB取材班が、シンポジウムの概要を、学会のご紹介と併せてお伝えします。
取材・執筆 コハツWEB取材班
日本教育心理学会とは? 教育・心理分野横断で最新の知見が集まる場
一般社団法人日本教育心理学会は、多様な領域の最前線で活動する研究者や実践家たちが最新の知見と経験を持ち寄る、国内でも大規模な学術団体の一つです。
昨今、子どもの発達をめぐる課題が複雑化する中、知見共有の場である学術団体は国内外で増加してきました。
その中でも同学会は1959年設立以来、子どもたちの学びや発達、それらを取り巻く環境について、日本の教育心理学研究の中核を担ってきた実績を持ちます。
その源流は20世紀初頭に欧米から導入された実験心理学や児童学を基にした「児童研究」の勃興に遡ります。
まず基礎科学としての日本心理学会が1927年に、次いで教育学全般を扱う日本教育学会が1941年に設立。
日本教育心理学会は、これら先行学会の取組を土台とし、第二次世界大戦後の教育改革の中で生まれました。
特に、新しい教育課程における教育評価、学習指導、カウンセリングなど、教育現場で心理学的知見の応用への需要が高まったことが直接的な設立背景です。
歴史と実績に加え、教育と心理にかかる分野横断での専門家の交流地点となっていることも特徴です。
参考:教育・心理にかかる国内の代表的な学会との比較
・公益社団法人日本心理学会(約8,000人/1927年設立。基礎から応用まで幅広い研究者が所属)
・一般社団法人 日本教育学会(約2,800人/1941年設立。教育学としては国内最大規模。教育哲学、教育史、教育方法などを網羅)
・一般社団法人 日本教育心理学会(約4,600人/1959年設立。教職や教育心理学にかかわる実務者、大学や大学院で教育心理学や関連領域研究者による)
本学会で交わされる議論は、明日の教育現場をより良くするためのヒントになるだけでなく、政策などの大きな流れに影響を与えることも少なくありません。
文科省施策に対する2025年の新たな視点となるシンポジウム
当研究所は、今年の第67回総会では自主シンポジウム「COCOLOプランの科学的検討|不登校支援の新たなデザインと実践におけるエビデンスとは」を企画しました。
- 日時:2025年10月12日(日)9:30~11:30
- 場所:アクトシティ浜松5階 53会議室
- 企画・司会・話題提供:和久田 学(公益社団法人 子どもの発達科学研究所 所長/主席研究員)
- 話題提供:西村 倫子(大阪大学大学院 連合小児発達学研究科 准教授)、足立 匡基(明治学院大学 心理学部 准教授)、丸谷 大輔(品川区教育委員会事務局 教育総合支援センター センター長)
- 指定討論:丸山 克彦(美濃加茂市 副市長)
- キーワード:不登校、COCOLOプラン、学校風土
今回のテーマの背景には、止まらない子どもの不登校増加の状況があります。令和5年における小中学校の不登校児童生徒数は34万6,482人と過去最多になりました(文部科学省、2024)。
これまで当研究所では、不登校の要因となる諸課題に対し様々な科学的アプローチを行ってきました。文部科学省から「子どもみんなプロジェクト」をはじめとする複数の委託事業も受託しています。
本シンポジウムは、そんな取り組みの中で当研究所が受託した「子どもみんなプロジェクト」をもとに、文部科学省が、不登校対策に対する科学的視点を起点として2023年に発表した「誰一人取り残されない学びの保障に向けた不登校対策(COCOLOプラン)」を多角的に検討するものです。
シンポジウムでは当研究所の和久田がCOCOLOプランについて、RTIモデルの実装であり、科学的アプローチであるとして整理し、さらに学校風土の重要性について提起しました。
続いて、足立氏が縦断研究から見えてきた不登校の心理社会的な前駆症状、丸谷氏が品川区における学校風土調査や校内教育支援センター設置といった具体的な実践について報告。
さらに、西村氏からはデジタル健康観察などを活用したデータ利活用の可能性について報告されました。
コハツWEBでは当日の様子を詳細レポート予定です。読者の皆様におかれましては、楽しみにお待ちいただけたら幸いです。
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2024年の関連企画ご紹介
今年のシンポジウムの前段となる議論も、当研究所は2024年の「日本教育心理学会第66回総会」で実施しました。
同研究所の和久田が企画・司会・話題提供を務め貴重な臨床データとともに行われたディスカッションの全容をコハツWEB取材班が前編・後編の2本の記事に分けてご紹介しています。
不登校のきっかけに対する「睡眠」「発達障害」「感覚過敏」という新たな視点からのアプローチに大きな注目が集まった前回の内容もぜひご確認ください。
過去記事はこちら:不登校の背景に学校風土、睡眠、発達障害、感覚過敏の問題 子どもの発達科学研究所が日本教育心理学会シンポジウムで分析結果を発表
2024年 シンポジウムの概要
- タイトル:日本教育心理学会第66回総会企画シンポジウム「不登校に関する要因と必要な支援―文部科学省委託事業、不登校要因調査の結果からわかること」
- 開催日時:2024年9月16日(月・祝) 9時30分~11時30分
- 開催場所:アクトシティ浜松 コングレスセンター
- 提 案 者:和久田学・公益社団法人 子どもの発達科学研究所 所長/主席研究員
- 概 要:「文部科学省委託事業、不登校要因調査の結果からわかること」という副題の通り、研究所が文部科学省の委託を受け2022年に行った大規模な不登校要因調査の結果と、科学的な分析データを紹介。








